2025年の「T&D保険グループ 新語・流行語大賞」ノミネート30語が発表された。自由国民社が11月上旬に公開した公式特設サイトでは、各語にNo.01〜No.30の通し番号を振ったうえで「50音順」であることを明記している。昨年と同様、テレビや新聞で頻繁に報じられたキーワードだけでなく、配信番組やSNSのコミュニティ、地域密着型のニュース、さらには観光や食文化の現場から芽生えた言葉が同居していることがわかる。ノミネート語は下記の通りだ。
- エッホエッホ
- オールドメディア
- おてつたび
- オンカジ
- 企業風土
- 教皇選挙
- 緊急銃猟/クマ被害
- 国宝(観た)
- 古古古米
- 7月5日
- 戦後80年/昭和100年
- 卒業証書19・2秒
- チャッピー
- チョコミントよりもあ・な・た
- トランプ関税
- 長袖をください
- 二季
- ぬい活
- 働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相
- ビジュイイじゃん
- ひょうろく
- 物価高
- フリーランス保護法
- 平成女児
- ほいたらね
- 麻辣湯
- ミャクミャク
- 薬膳
- ラブブ
- リカバリーウェア
リストを眺めると、政治や経済をめぐる国際情勢を背景にした「トランプ関税」「教皇選挙」といったニュースワードがある一方で、「ビジュイイじゃん」「平成女児」「ぬい活」などファンカルチャーから広がったフレーズが並ぶ。地域社会や生活者の視点からは、石川県珠洲市の方言が由来の「ほいたらね」、文化財鑑賞の共有を促す「国宝(観た)」、野生動物との距離感を問い直す「緊急銃猟/クマ被害」など、ローカルな現象が全国区の話題となったケースも目立つ。さらに、被災地支援を後押しする「おてつたび」や、気候変動による季節感の変化を切り取った「二季」など、社会課題に対する新しい視点が語彙化された例も含まれている。
また、「エッホエッホ」「チャッピー」「ミャクミャク」といった語は、バラエティ番組やイベント、SNSで拡散した固有名詞・フレーズで、特定の視聴体験やコミュニティに接点がないと意味がつかみにくい。それでもノミネートに加わるのは、メディアが細分化した現代において、それぞれの場で共有される感情やストーリーが確かに存在することの証しと言える。
知らない言葉と出会う驚きは、むしろ流行語大賞が果たす“翻訳装置”としての役割を強化する。異なるメディア圏を行き来する言葉を紹介することで、社会の断片をつなぎ合わせ、多様な価値観を行き交わせるきっかけが生まれる。12月に予定されるトップテン・年間大賞の発表では、どの言葉が「橋渡し役」として注目を集めるのか見届けたい。